生涯にただ一冊の句集「生きてこそ」 山本久子 | 「生きてこそ」俳句抜粋のヘッダー画像: 生涯にただ一冊の句集「生きてこそ」山本久子著
生涯にただ一冊の句集「生きてこそ」 山本久子 | 「生きてこそ」俳句抜粋のページ画像1:抜粋句   昭和 51年 ~ 昭和 56年  向こう岸夢見て蒲公英絮になる  サングラスはづし故郷の海を見る     母の日も知らぬ鋏の小鈴かな    忘れものして花の道戻りけり    はろばろと牡丹焚火にめぐり会ふ    かぶと虫甲冑のまま縄目受く    鬼婆を抱きて替ふる菊ごろも     冬うらら戴き忘る呆け封じ     昭和 57年 〜 昭和 59年     流し雛雲なき空と思ひけり    風化して秋の羅漢のやさしさよ    毛糸編む読書の夫と灯をわけて    着ぶくれて待てば着ぶくれ手を振っ     春愁や太古の魚の重装備    ミシン踏むメーデーの歌遠く聞き    残照の湾にたゆたふ百合鷗    窯の火を落し師走の主婦となる
生涯にただ一冊の句集「生きてこそ」 山本久子 | 「生きてこそ」俳句抜粋のページ画像2:昭和 60年 〜 昭和 62年     二の午の女将さらりと常まゐり       爪紅の跣足踏ンまへ神輿舁く     垣通し咲くよどつかと芭蕉句碑      糶池の雲と美髯の小鯰と      河鹿鳴く痩身引き絞り引き絞り     花屋敷煤逃げ父子が犬連れて    一村を沈むる桃の花霞    橋渡る神輿川面の綺羅つれて    昭和 63年 〜 平成 2年    石斧もて拓きし森の囀れり     花二分の夜を場所割りの露天商    揚ひばり庵主の誦経四拍子    緒のゆるき下駄ふるさとは良夜なる    全灯ともし霧ごめの山上駅    宝剣岳や花野に拡ぐ霧の裾    スキップの児と花種を買ひに行く    小綬鶏に呼ばれて入る閻魔堂
生涯にただ一冊の句集「生きてこそ」 山本久子 | 「生きてこそ」俳句抜粋のページ画像3:平成 3年 〜 平成 5年  能囃子月冴ゆ野づら渡りけり     黒川に生きて証の能を舞ふ    能の里直会に舞ふもんぺかな    木喰に女人佛あり華鬘咲く    追儺寺鬼に福茶をいただけり    料峭の古刹やかくれ耶蘇の墓    用あらば銅鑼を叩けと遅日寺     寄り合ひて住む灯がともる霧部落    福豆嚙む身ぬちに小鬼棲まはせて    星とべり間奏三味の掬ひ撥    仮の世の胡弓泣かせて風の盆    秋の湖に映る町なり灯りけり    平成 6年 〜 平成 8年    春愁や友はきらめく言葉吐く   迎へまだの園児と菊を括りけり    泣く目鼻持たぬ雛の流さるる     本厄の総身を焙る大どんと     風筋を見せて菖蒲田暮るるかな     涅槃図へ児等神妙な膝がしら     売れ残る熊手のおかめ笑ひをり
生涯にただ一冊の句集「生きてこそ」 山本久子 | 「生きてこそ」俳句抜粋のページ画像4:平成 9年 〜 平成 11年 陽炎うて二両電車が眠く来る    さくらさくら古都のはづれの小さき寺    山手線ひとまはりして春惜しむ    寂寞と白木蓮の空ありぬ    嘘とわかる嘘つかれをり日向ぼこ    平成 12年 〜 平成 14年  試歩の夫桜月夜を帰り来る    曼珠沙華高麗郡の野づらは炎の匂ひ    春満月四天を統ぶる神のあり    山からの風聞きすます糸桜    花八つ手明るく洩らす老の愚    針穴をねらふ糸先きりりと秋    方丈の涼しや読めぬ軸二幅    冬うらら火伏せの護符をいただきに
生涯にただ一冊の句集「生きてこそ」 山本久子 | 「生きてこそ」俳句抜粋のページ画像5:平成 15年 〜 平成 17年  風神の機嫌のままか飛花落花    望の月あげ一湾の凪   丁寧に余生送らむ餅の花    花の雨千手重たき観世音    だんまりの幸せもあり花の昼    神のなす技とはかくも冬ざくら    言葉貧しき者へ大輪の薔薇真っ赤    詩に遠き言葉ならべて夜長の灯    身の内の修羅を寝かせて花月     極楽の余り風とや沙羅芽吹く    名月へ押す小康の車椅子    平成 18年 〜 平成 20年    蝶吹かれ白萩寂ぶる芭蕉句碑    炎天にたぢろぐばかり細き杖    我が影の先に乗り込む春のバ     逝きし子の誕生日に買ふ柏餅    海への路地夏濃く匂ふ故郷かな    竜の玉天の色もてこぼれをり    秋天の余白へ長き飛行雲    下肢機能障害手帳春待てり
生涯にただ一冊の句集「生きてこそ」 山本久子 | 「生きてこそ」俳句抜粋のページ画像6:  平成 21年 〜 平成 23年    亡夫よそちらも咲いてゐますか冬桜    束の間の夕日集めて忘れ花    手をつなぎ歩きたかった夏の月    夫亡くて月今宵など言ふまじく    鳥ぐもり思ひ出しては又忘る    さくらさくら此の日の本に生きてこそ    ものの芽の力みなぎる雨あがり    新樹光墨糸はじく宮大工    羽子板市抱かせてもらふ玉三郎    大津絵の鬼と起きてる良夜です    句会終ふ一人ひとりに暮るる秋    夕顔の一花の夜を惜しみけり

     
     
     
     
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